工務店が不動産仲介業に参入する前に知っておくべき3つの注意点

公開日:2025/08/06
工務店が不動産仲介業に参入する際、成功の鍵は事前の準備と戦略にあります。

この記事では、参入前に工務店が特に注意すべき3つの重要なポイントを解説しています。

リスクを回避し、新たなビジネスチャンスを掴むためにぜひ参考にしてください。


注意点1:不動産仲介業の基礎知識と法規制の理解


工務店が不動産仲介業に進出する上で、不動産仲介業に関する深い知識と法規制の理解は不可欠です。不動産取引は、民法、宅地建物取引業法、建築基準法など、多岐にわたる法律が絡み合っており、これらの法律を遵守することは、事業の継続と顧客の信頼を得る上で絶対条件となります。

特に宅地建物取引業法は、不動産仲介業をおこなううえで最も重要な法律です。

この法律は、不動産取引の公正さを保ち、消費者を保護することを目的としており、業務を行う上でのルール、広告規制、契約に関する義務などがあります。

これらのルールを守ることは、法令違反による罰則を避けるだけでなく顧客からの信頼を得るために不可欠です。

また、不動産市場や価格動向、税金に関する知識なども必要となります。これらの知識を習得することで、顧客に対して適切なアドバイスを提供し、満足度の高いサービスを提供することができます。

 

不動産仲介業の業務範囲と責任


不動産仲介業の業務範囲は、物件の探索から始まり、契約交渉、重要事項説明、契約締結、引き渡しまで多岐にわたります。

これらの業務を遂行するにあたり、不動産会社は顧客に対して誠実で公平な対応が必要で、専門家として責務を果たさなければなりません。

顧客のニーズを正確に把握し、最適な物件を提案するスキル、契約条件について交渉するスキル、取引のリスクを説明する対応力などが求められます。

特に、重要事項説明は宅地建物取引業法で義務付けられており、物件に関する重要な情報を顧客に正確に伝える必要があります。

また、不動産取引は高額な金額が動くため、トラブルが発生しやすいという側面もあります。そのため、万が一の事態に備えて、損害賠償責任保険への加入や、紛争解決のための体制を整えておくことも重要です。

 

資格取得と専門家との連携


不動産仲介業を始めるにあたり、宅地建物取引士の資格取得は必須と言えます。

宅地建物取引士は、不動産取引に関する専門的な知識とスキルを持つことを証明するものであり、重要事項説明や契約書への記名・押印など、宅地建物取引士でなければ行うことができない業務があります。

資格取得のためには試験に合格する必要があり、試験対策講座を受講したり、過去問を繰り返し解いたりすることで合格の可能性を高めることができます。

また、不動産仲介業は、法律、税金、建築など様々な専門知識が求められるため、弁護士、税理士、建築士などの専門家との連携が不可欠です。

これらの専門家と連携することで顧客に対してより質の高いサービスを提供することが可能になり、安心して取引を進めることができます。

 

注意点2:集客戦略と差別化戦略の策定


不動産仲介業への参入を成功させるためには効果的な集客戦略と、競合他社との差別化を図るための戦略が不可欠です。

多くの不動産会社が存在する中で顧客に選ばれるためには、自社の強みを明確にし、ターゲットとする顧客層に合わせたアプローチを行う必要があります。

集客戦略ではオンラインとオフラインの両方を活用し、見込み客の獲得を目指します。
オンラインでは自社ウェブサイトのSEO対策、リスティング広告、SNSなどを活用し、オフラインでは、チラシの配布、地域イベントへの参加などを行います。

差別化戦略では、独自のサービスや強みを打ち出し競合他社との違いを明確にします。
たとえば、特定のエリアに特化した情報提供、リフォームやリノベーションの提案、相続に関する相談など、自社の強みを活かしたサービスを提供することで、顧客のニーズに応えることができます。

 

ターゲット顧客の明確化とニーズの把握


集客戦略と差別化戦略を策定する上で最も重要なのは、ターゲットとする顧客層を明確にし、そのニーズを正確に把握することです。

ターゲット顧客を明確にすることで、どのような物件を扱うべきか、どのようなサービスを提供すべきか、どのような広告を出すべきかなどが明確になります。

たとえば、ファミリー層をターゲットとするのであれば、学校区や公園に近い物件、子育てしやすい環境などを重視した情報提供を行う必要があります。

最近では単身者の持ち家検討者も増えているため、単身者をターゲットとするのであれば、駅に近い物件、セキュリティがしっかりしている物件などを重視した情報提供を行う必要があります。

ターゲット顧客のニーズを把握するためには、アンケート調査、市場調査などを行うことが有効です。これらの調査を通じて、顧客がどのような物件を求めているのか、どのようなサービスを求めているのかを把握し、それらに合わせた戦略を策定する必要があります。

 

オンラインとオフラインを組み合わせた集客戦略


集客戦略は、オンラインとオフラインの両方を組み合わせることでより効果を発揮します。

オンラインでは、自社ウェブサイト、リスティング広告、SNSなどを活用し、見込み客の獲得を目指します。

自社ウェブサイトは、物件情報だけでなく、不動産に関する知識やノウハウ、地域情報など、顧客にとって有益な情報を提供することでウェブサイトへの訪問者を増やし、見込み客へと繋げることが可能です。

リスティング広告は検索エンジンの検索結果に表示される広告であり、特定のキーワードで検索したユーザーに対して自社のウェブサイトへ誘導することができ、SNSは、Facebook、Twitter、Instagramなど、様々な種類があり、それぞれのSNSの特徴に合わせて情報発信を行うことで、見込み客とのコミュニケーションを深めることができます。

オフラインでは、チラシの配布、モデルハウスやオープンの開催、地域イベントへの参加などの方法があります。
チラシは特定の地域に住む住民に対して、物件情報や自社のサービスを告知することができ、モデルハウスやオープンハウスは、実際に物件を見学してもらうことで顧客の購買意欲を高めるチャンスにもなります。

このように地域イベントへの参加は地域住民との交流を深め、自社の認知度が高まるきっかけにつながります。

 

独自の強みを活かした差別化戦略


競合他社との差別化を図るためには自社の強みを明確にし、それを活かした戦略を策定することが重要です。

工務店として不動産仲介業に参入する場合、建物の構造や設計に関する知識、リフォームやリノベーションの提案能力など他の不動産会社にはない強みを持っているはずです。

これらの強みを活かし、たとえば、「リフォーム・リノベーションに強い不動産会社」「建築のプロが選ぶ安心・安全な物件」といったように、独自のブランドイメージを構築することで、顧客のニーズに応えることができます。

また、特定のエリアに特化した情報提供を行うことも差別化戦略の一つです。

たとえば、「〇〇エリアの物件情報シェアNo.1」といったように、特定のエリアに特化することで、そのエリアの物件情報に精通しているというイメージを顧客に与え、信頼を得ることができます。

 

注意点3:リスク管理と財務計画の策定


不動産仲介業は高額な取引を扱うため、先述のように法規的な部分を理解していないとリスクを伴います。リスクを事前に把握し適切な対策を講じることは事業の安定的な運営のために不可欠です。
契約不適合責任、境界紛争、事故物件など様々なリスクが考えられるため、これらを事前に把握し契約書に明記したり保険に加入したりすることで、万が一の事態に備えることができます。

また、事業を継続するためには安定した財務基盤を築く必要があり、収支計画や資金調達計画などの財務計画を立てることも重要です。

 

不動産取引におけるリスクの把握と対策


不動産取引における主なリスクとしては、契約不適合責任、境界紛争、事故物件、地盤の問題などが挙げられます。

契約不適合責任
売買契約の内容と異なる物件が引き渡された場合に売主が買主に対して負う責任のことを指します。

境界紛争
隣接する土地との境界線が不明確な場合に発生する紛争です。

事故物件
過去に殺人事件や自殺などが発生した物件です。

地盤の問題
建物の地盤が軟弱であるために、建物が傾いたり沈下したりする問題です。

これらのリスクを事前に把握し適切な対策を講じることは、顧客だけでなく自社を守るためにも重要です。

契約書に明記したり、専門家による調査を行ったりすることでリスクを軽減することができます。

 

収支計画と資金調達計画の策定


不動産仲介業を始めるにあたり、収支計画と資金調達計画の策定は不可欠です。

工務店が行う不動産事業の場合、収入は仲介手数料のほかに、工務店紹介料、自社建築売上などが考えられます。

一方で支出は、人件費、広告宣伝費、地代家賃(事務所を別で設ける場合)、水道光熱費、などを考慮します。

資金調達計画を策定する際には、自己資金、融資、出資のほかに、補助金や助成金なども検討すると良いでしょう。

これらの計画を策定することで、事業の見通しが立ち継続性を高めることができます。

 

まとめ:綿密な準備と戦略で不動産仲介業参入を成功させよう


工務店が不動産仲介業に参入するにあたり、基礎知識の習得、集客戦略の策定、リスク管理、財務計画の策定など、綿密な準備と戦略が不可欠です。

不動産仲介業は専門的な知識とスキルが求められる分野であり、法規制も厳しいため、安易な気持ちで参入すると思わぬ失敗を招く可能性があります。

しかし、しっかりと準備を行い戦略的に事業を進めることで成功を収めることも可能です。

工務店としての強みを活かし、顧客のニーズに応える独自のサービスを提供することで、競合他社との差別化を図り、顧客からの信頼を得ることができれば、不動産仲介業を通じて建築事業をさらに成長させる可能性は十分にあります。

この記事で解説した注意点を参考に、入念な準備と戦略を練り、不動産仲介業への参入を成功させましょう。

私たち物件王は、「建築×不動産」の相乗効果を最大限に引き出し、利益へと繋げるためのノウハウを持っています。

開業前の準備から、開業後の集客・売上アップ、トラブルの相談まで、全国の工務店・建築会社の皆様を包括的にサポートしています。

こちらの資料では、より詳細な注意点を「失敗パターン」としてわかりやすくまとめています。ぜひご参考にしてください。


工務店による不動産仲介業の失敗パターン8選 ~建築×不動産の実務経験者が語る~

不動産仲介業への参入をご検討中でしたら、お気軽にお問い合わせください。
貴社の状況に合わせた最適な情報をご提供します。

お問い合わせはコチラ