職人を守り組織を2倍にする、工務店が「建築×不動産」を一体化すべき3つの理由

公開日:2026/06/05

職人の「次、どこの現場に入ればいい?」という一言に、歯痒さを抱える経営者へ


「社長、来月からの現場って、もう確定してる? 職人の予定を組みたいから、次の段取りを早めに教えてもらえると助かるよ」

現場を支えてくれる頼もしい棟梁や、気心の知れた職人さんたちから、夕方の片付けの合間にそんな風に声をかけられた経験を持つ経営者は少なくないはずです。

決して責められているわけでも、威圧的な口調で言われているわけでもありません。
むしろ、いつも通り淡々とした、静かなトーンの問いかけだからこそ、経営者の胸の奥にはズシリと重い歯痒さや焦燥感が残ります。

「来月からの工事、まだ正式な契約が上がっていないなんて、今の彼らには言えない…」

地域の工務店や専門工事店を率いる皆様にとって、自社のスタッフや協力業者の職人さんたちは、単なる「外注先」ではなく、共に現場を作り上げてきた大切なパートナーであり、会社の原動力そのものです。

「彼らの仕事と生活を安定させたい」
「ずっと自社の現場で、安心して腕を振るってほしい」──

そう願うのは、組織のトップとして当然の、そして極めて真っ当な責任感です。

しかし、現在の住宅業界を取り巻く環境を見渡したとき、建築一本の、これまでのやり方だけでその想いを貫き通すことに、限界や強い不安を感じていらっしゃる経営者様も多いのではないでしょうか。

少子高齢化に伴う市場の縮小、コロナ禍以降に加速した建材・エネルギー価格のハイパーインフレは、工務店の経営を構造的に圧迫し続けています。

新築注文住宅の価格が跳ね上がったことで、これまで主戦場だった若年層の一次取得者層は「新築が買えない」という現実に直面し、顧客獲得の競争は激化する一方です。

こうした状況下で建築一本の元請け受注にこだわろうとすると、どうしても他社との激しい「相見積もり」や「価格競争」に巻き込まれざるを得なくなります。
なんとか受注を勝ち取ったとしても、削り取られた薄い粗利益の中からでは、職人さんたちに「もっと多く、安定して支払ってあげたい」という願いを叶えることは極めて困難です。

また、ハウスメーカーや大手デベロッパーの下請け(BtoB)をメインとしている会社であれば、親会社の事業縮小や棟数減少の煽りをダイレクトに受け、仕事量そのものが急激に減少していく恐怖とも戦わなければなりません。

「綺麗事に聞こえてしまうかもしれないが、自分を信じてついてきてくれるスタッフや職人全員が、経済的にも精神的にも豊かになれる入口を作りたい」

もしあなたが今、そんな切実なジレンマを抱えているなら、建築というコンフォートゾーン(安全地帯)から一歩踏み出し、「建築×不動産仲介」を一体化させたワンストップ経営へ舵を切るべきタイミングが来ています。

不動産という「武器」を自社に組み込むことは、単なる目先の売上アップのための手段ではありません。

相見積もりを完全に排除し、これまで他社に流れていた利益を自社で内製化することで、大切な職人たちの仕事と生活を安定させ、組織を次なるステージへと着実に成長させていくための「極めて現実的で合理的な経営判断」なのです。

本記事では、なぜ建築と不動産の一体化が、職人の待遇改善と組織の安定拡大を同時に成し遂げられるのか、その具体的な「3つの理由」を現場の課題感に即して客観的に紐解いていきます。

 

理由①:相見積もりゼロの「大型案件」が安定して入り、職人の予定を1年先まで埋められるから


経営者として最も胃が痛む瞬間の一つは、現場のスケジュールに「ポッカリと穴が空く期間」ができてしまうことではないでしょうか。

「来月からの現場がまだ確定していない」
「引き合いはあるが、相見積もりの結果待ちで予定が組めない」

といった工事の波(繁閑の差)は、職人さんたちの生活を不安定にする最大の要因であり、経営者にとっては固定費や人件費の重圧となって圧しかかります。

なぜ、このような「工事の波」や「相見積もりによる失注」が起きてしまうのか。
それは、工務店が顧客と出会うタイミングが、住宅ビジネスの商流において常に「川下(かわしも)」にあるからです。

家を建てたい、あるいは中古住宅を買ってリフォームしたいと考えているお客様は、まず最初に「土地」や「物件」を探します。

つまり、お客様は工務店に来る前に、必ず地域の「不動産会社」へ足を運んでいるのです。 商流の最上流(川上)である不動産会社に顧客を握られている状態では、工務店は不動産業者から「土地が決まったお客様」を紹介してもらうか、ポータルサイト等で莫大なコストをかけて集客するしかありません。

そして、その段階のお客様の手元には、すでに他社のカタログや相見積もりのプランが並んでおり、過酷な価格競争の土俵に立たされることになります。

しかし、自社が不動産仲介業を内製化し、お客様と「家づくりの最上流の接点」で出会うことができたら、状況は一変します。

お客様が「この土地(物件)がいいな」と思ったその瞬間に、建築のプロであるあなたが横に立ち、「この土地なら、こういう間取りが組めますよ」「この中古物件なら、これくらいの断熱・耐震リフォームをすれば新築同様に暮らせますよ」と、その場でスピード回答を行うのです。

土地・物件の購入と、建築・リフォームのプランニングがその場でシームレスに一本化されるこの「ワンストップ提案」において、競合他社が介入する余地は1%もありません。

お客様にとっては、予算の総額が明快になり、住宅ローンの手続きも窓口一つで完結するという圧倒的なメリットがあるため、他社と比較することなく「あなたにお願いします」と即決されます。

【ワンストップの強み】不動産をフックに川上から顧客をホールドするため、他社との相見積もりが100%発生しない状態で、高単価な注文住宅や大型リノベーション案件を自社主導で受注できるようになる。

競合がいないため、受注の成約率は劇的に跳ね上がります。
さらに、不動産仲介の段階から先々の請負工事の計画を自社で完全にコントロールできるため、「3ヶ月後はこのリノベ現場、半年後からはこの新築現場」というように、職人さんたちのスケジュールを1年先、2年先まで計画的に、綺麗に埋めていくことが可能になります。


「仕事が途切れる心配がない」という絶対的な安心感を職人さんたちに提供できることこそが、建築×不動産一体化経営がもたらす「最も確実で、インパクトの大きい成果」です。

 

理由②:中間に流れる「不動産利益」を自社で内製化し、職人の手間受け単価を大幅に引き上げられるから


「みんなが一生懸命に頑張って、素晴らしい家を創り上げているのに、なぜか会社に十分な利益が残らない。これでは職人さんたちの手間受け単価を上げてあげたくても、原価計算の段階で削らざるを得ない…」

こうしたジレンマに直面し、自社のビジネスモデルそのものに限界を感じている経営者様は非常に多くいらっしゃいます。

建築業界の原価高騰は凄まじく、建材や人件費の上昇分をすべてお客様の請負金額に転嫁すれば、今度は「高すぎて買えない」とお断りされてしまうため、結局は自社の粗利益や職人の人件費を削って調整するしかない、という悪循環に陥りがちです。

この苦境を切り拓く突破口となるのが、不動産ビジネスがもたらす「別のポケットの利益(仲介手数料・売却益)」の存在です。

これまで、お客様が土地や中古住宅を購入する際、中間の不動産会社に支払っていた数百万円規模の「仲介手数料」を想像してみてください。

それは本来、あなたの会社が建築の提案をし、敷地調査をし、汗を流して顧客をサポートした結果として、中間の業者に素通りして流れていた利益です。

不動産仲介業を自社で行うということは、この中間に流れていた利益を丸ごと自社で「内製化」することを意味します。

例えば、2500万円の土地や中古物件の売買仲介が成立した場合、それだけで片手でも約90万円(法定上限:3%+6万円+消費税)の仲介手数料が、建築の請負利益とは「別枠」で会社のダイレクトな粗利益として入ってきます。もし、売り主側と買い主側の双方を自社が仲介(両手仲介)できれば、その金額は2倍の約180万円になります。

この不動産利益の最大のメリットは、仕入れ値や在庫リスク、余分な施工原価がほとんどかからない「極めて利益率の高い純利益」であるという点です。

建築単体(請負工事だけ)で180万円の純利益を上乗せしようとすれば、工事金額をどれだけ値上げしなければならないか、経営者の皆様ならお分かりになるはずです。

しかし、不動産仲介という別のポケットから潤沢な粗利益がもたらされることで、会社全体の資金繰りと収益構造には劇的なゆとりが生まれます。

この生み出された原資があるからこそ、経営者は綺麗事や無理をすることなく、職人さんたちの手間受け単価を「もう少し多く、色をつけて支払ってあげる」ことができるようになります。

「いつも無理な値引き交渉ばかりしてくる親会社の下請け」から完全に脱却し、自社が元請けとして不動産利益を原資に職人を豊かにする。

これこそが、職人の高齢化や人手不足が進む現代において、優秀な大工や技術者を自社に囲い込み、次世代の担い手を育てるための、最も現実的で持続可能な解決策なのです。

 

理由③:未経験の若手や異業種スタッフでも「即戦力」として活躍でき、経営者の属人性を脱して組織を2倍に急拡大できるから


「不動産をやるべき理由は分かった。でも、うちは自分も含めて建築の人間ばかりだし、不動産の営業なんて誰もできない。新しくベテランの不動産営業マンを採用する余裕もないし、そもそもそんな優秀な即戦力人材は、今の採用市場ではそう簡単に見つからない…」

多くの工務店経営者様が最後にぶつかるのが、この「人材と仕組み」の壁です。

確かに、新築注文住宅の設計営業や、複雑なリフォームの積算ができるプロの建築営業マンを育成するには、個人のセンスや長年の経験が必要であり、1人前に育てるまでに数年単位の時間と莫大なコストがかかります。

そのため、どうしても社長自身の「属人的な営業力」に会社全体の売上が依存してしまい、組織を拡大したくても拡大できないというジレンマを抱えがちです。

しかし、不動産仲介の営業ビジネスは、建築営業とはその構造が根本的に異なります。

建築営業が「ゼロから形のない理想を形にする」という極めて難易度の高いクリエイティブな仕事であるのに対し、不動産仲介営業の本質は「すでに市場に存在する土地や物件(情報)を、お客様の予算や希望のエリアに合わせて適切にマッチングする」という、極めてシステマチックな仕事です。

つまり、正しいWEBシステム、正確な物件データベース、そして現場の声に基づいた実務マニュアル(スクリプト)さえ整備されていれば、業界未経験の若手社員や、これまで現場を経験したことのない異業種のパートスタッフであっても、驚くほど短期間で即戦力として活躍できるようになります。

実際、物件王のシステムを導入して不動産事業を立ち上げた加盟店様の中には、建築の知識が全くない20代の若手や女性スタッフが不動産の窓口に立ち、怒涛のように押し寄せる「物件探しのお客様」の初期対応を次々とこなしている事例が数多く存在します。

若手スタッフが不動産ポータルや自社サイトから反響を獲得し、物件の案内から資金計画の初期段階までを仕組み(マニュアル)に沿ってスムーズに進める。

そして、お客様の「この物件に、自分たちの理想の家を建てたい、リフォームしたい」という熱量が最大化したタイミングで、大黒柱である経営者やベテラン建築士がバトンを受け取り、プロとしての設計提案を行う──。

「集客と初期営業の仕組み化(分業体制)」が確立されることで、経営者は24時間365日、自分が営業の最前線に立ち続けなければならないという呪縛から解放されます。

社長一人の労働時間に縛られていた売上の天井が取り払われ、仕組みが自動的に顧客を連れてくるようになるため、受注数は自然な流れで1.5倍、2倍へと跳ね上がっていきます。

組織が拡大し、会社の財務基盤が太くなれば、それだけ社員の給与や待遇にも還元できるようになり、より優秀な人材が集まるという「成長の正のスパイラル」が回り始めるのです。

 

まとめ:これからの時代、身内の職人や社員の未来を確かなものにするために


市場の縮小、顧客の意識変化、そして建築資材の高騰──。

いま地元の工務店が直面している試練は、一時的な景気の波ではなく、住宅業界の構造そのものが激変していることの現れです。

この大きな時代の潮流を前に、建築一本、職人の腕一本だけで何とか乗り切ろうとすることは、これまで会社を支えてくれた大切なスタッフや職人さんたちを、かえって先々のリスクに晒すことになりかねません。

「良い家をつくり、関わるすべての人を幸せにしたい」

その強い想いを現実のものにするためにこそ、経営者はビジネスの構造を時代に合わせて適応させる柔軟さを持つ必要があります。

建築のプロとしての確かな技術力と信頼を、最も必要としている「家づくりの最上流の顧客」へ届けるために、不動産というチャネルを自社に組み込むのです。

商流の川上に立ち、相見積もりをゼロにして、高い粗利益率を確保しながら職人に安定して仕事を出し続ける。

この「建築×不動産」のハイブリッドな形こそが、これからの厳しい市場環境を生き抜き、自社の組織と身内を豊かにするための、極めて合理的で真っ当な経営の正解です。

 

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