成長の鍵は「人」への投資。「仕組み化」と「属人化」で成功した2社から学ぶ経営戦略

渡部 有香 渡部 有香
マーケティング
公開日:2025/09/10
多くの企業が直面する「事業の成長」の課題。

今回は、目覚ましい成長を続ける2つの企業、楓工務店(アイニコグループ)ウィズダムグループの対照的な戦略に焦点を当てたセミナーの内容をお届けします。

徹底した「仕組み化」で新卒社員を育成し、安定的な成長を遂げる楓工務店。

「属人的なアプローチ」で個の能力を最大限に引き出し、急成長を成し遂げたウィズダムグループ。

真逆ともいえる2つの戦略には、会社の成長を加速させるヒントが隠されています。

ぜひ、最後までお読みください。


2社の事業概要と成長の軌跡


楓工務店とウィズダムグループ、どちらも驚異的な成長を遂げている2社ですが、その戦略はまるで正反対です。

楓工務店: 建築・不動産事業に加え、リフォーム、介護、保育園など多岐にわたる事業を手がけています。新卒採用に力を入れ、採用した人材を時間をかけてじっくりと育てることで売上を伸ばす、堅実な成長モデルを描いています。

ウィズダムグループ: 建築・不動産事業を主軸に、創業からわずか数年で全国トップクラスの成長率を達成しました。中途採用を積極的に行い、代表自らが面接で熱意を伝えることで経験豊富な即戦力を迎え入れ、急成長を実現。



 

立ち上げ期の苦労と乗り越えた戦略


不動産事業の立ち上げ期は、未経験の担当者にとってまさに暗中模索の状態。

両社はそこからどのようにしてこの苦境を乗り越えていったのか、実際の経験をもとに語っていただきました。

楓工務店(仕組み化)
・苦労: 現場監督出身の担当者が事業を立ち上げたため、知識不足から仲介手数料をもらい忘れるといった初歩的なミスが多発しました。

・戦略: 同じ失敗を繰り返さないよう、業務フローやトークスクリプト、チェックリストなどを徹底的に仕組み化。また、KPI(重要業績評価指標)を細かく設定し、週に一度の会議でボトルネックを特定して改善を重ねることで、新入社員でも安定した成果を出せる体制を築き上げていきました。

ウィズダムグループ(属人的)
・苦労: 立ち上げ時は担当者1人だけで、営業と事務作業をすべてこなさなければならず、時間管理に大きな課題を抱えていました。

・戦略: 徹底した属人的なアプローチで事業を推進。KPI管理は最小限に抑え、社員一人ひとりの人間性や自主性を尊重しながら、「まず行動する」ことを重視し、失敗しても挑戦を褒める文化を醸成。結果、個々の能力が組織全体の成長をぐいぐいと引っ張っていったのです。

 

成長戦略の深掘りとDXの活用


その後の組織運営やDXの活用にも、両社の対照的な戦略が明確に表れていました。

楓工務店(仕組み化)
DXの活用: 自社で開発した業務管理システム「ボックスジョブ」を活用。業務フローやタスク管理、資料管理などを一元化することで、新人でもミスなく業務を進められる環境を整え、さらにはAIを活用した情報収集や資料作成にも積極的に取り組んでいます。

ウィズダムグループ(属人的)
DXの活用: ChatGPTなどのAIツールを日々の業務に積極的に導入し、社員が日常的に使うことで慣れてもらうことを重要視しています。これにより業務効率が上がるだけでなく、未完成物件のイメージ画像作成など、顧客への提案力も向上しました。



 

建築と不動産事業のシナジー効果

両社に共通しているのは、建築と不動産事業の連携です。

不動産事業を立ち上げた理由の一つには、建築事業とのシナジー効果を狙う目的がありました。

集客の窓口を拡大: 住宅購入を考える人が最初に相談する窓口は「不動産屋」が半数以上を占めるというデータがあります。不動産事業を始めることで、これまで獲得できなかった顧客層にアプローチできるようになりました。

受注率の向上: 顧客は予算の関係上、「建物」よりも「立地」を優先する傾向があります。不動産の窓口に来る「まだ建てる会社を決めていない」顧客に対し、建築のプロとして資金計画や建物の提案を行うことで、自社の建築受注率が大幅に向上。

グループ全体の利益貢献: 不動産事業が独立採算で利益を出すことで、グループ全体の収益の柱に成長。両社とも不動産事業部は、グループ全体でトップクラスの営業利益を叩き出しています。

 

採用戦略の対比


両社の成長を支える上で欠かせないのが採用ですが、ここでもそれぞれの戦略は大きく異なっていました。

楓工務店: 新卒採用を重視。業務の仕組み化が徹底されているため、知識がなくても素直に吸収する新卒社員が、短期間で戦力になるスピード感が強みです。

ウィズダムグループ: 中途採用を重視。特に異業種からの未経験者を積極的に採用することで、業界の慣習にとらわれない柔軟な発想や行動力を引き出せるため、即戦力となりやすいです。

 



 

まとめ:2社の対照的な戦略から学ぶ成功のヒント


両社の戦略は一見すると全く違うように見えますが、成功の根底にあるのは共通して「人」への投資です。

・楓工務店は、徹底的な仕組み化とKPI管理によって新卒社員を計画的に育て上げ、安定した成長を実現。

・ウィズダムグループは、属人的なアプローチで社員の人間性や自主性を引き出し、個々の才能を最大限に生かすことで、急成長を遂げました。

どちらの戦略が優れているということではなく、この2社の事例から見えてくるのは、自社の成長フェーズや組織の文化に合った方法で、社員一人ひとりを大切にし、その成長を促していくことこそが、事業を成功へと導く決定的な鍵になるということです。

一つのやり方が全てに当てはまるわけではなく、それぞれの会社が持つ強みを最大限に生かすことで、最終的に大きな成果を生み出すのです。

あなたの会社に合う手法はどちらでしたか?ぜひ、自社に当てはめてみてください。

この記事が、少しでも貴社のヒントになれば幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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