
「建築業界はシュリンク(縮小)している」――そんな言葉を耳にするたびに、不安を感じている工務店の経営者様も多いのではないでしょうか。
国内の人口減少、資材コストの高騰、そして顧客の多様化…。逆風が吹く中で、私たちはこの市場でどのように生き残り、成長の道を見出すべきでしょうか。
この記事では、建築業界が直面している課題を明確にし、そのうえで「川上のお客様」との接点を増やすことで、生き残るだけでなく、利益を拡大するための具体的な戦略をご紹介します。
1. 建築業界が縮小していると断言できる4つの理由
建築業界が「シュリンクしている」と言われる背景には、複数の要因が絡み合っています。
① 国内人口の減少
最も大きな要因は、国内人口の減少です。シンプルに、家を建てる人の絶対数が減っているため市場規模も縮小せざるを得ません。
② 資材コストの増大と平均年収の横ばい
物価高騰の影響もあり、資材コストは増大しています。
一方で、国民の平均年収は約7年間ほとんど横ばいのままなのに対して、住宅価格は2018~2022年の間で300万円近く上がっており、現在は400万近くまで上がっている状況です。
この状況を見るに、消費者の家を建てることのハードルが上がり続けているといえます。
もはや新築住宅は、限られた属性しか購入ができないものになってきており、結果的に工務店・建築会社は利益を圧迫されています。

出典:国税庁 令和5年分 国民給与実態統計調査

出典:クレバリーホーム「クレバinfo」
③ 住居に対する考え方の多様化
価値観が多様化する中で、「家を買う」以外の選択肢を選ぶ層が増えています。
例えば、「賃貸でも良い」と考える層や、中古住宅を購入して高性能なリノベーションを選ぶ層の増加など、顧客のニーズが分散しています。
④ 競合他社の増加
住まいの多様化が進むとともに、業界内の競争も激化の一途を辿っています 。
実際、大手家電量販店などの異業種がリフォーム市場に参入し、また、限られた新築購入層に対して多数の工務店・建築会社が集客する状況が生まれています 。
ユーザーの選択肢が増え、ニーズが分散するなかで、工務店が従来のビジネスモデルに固執していては、安定して利益を上げ続けるのは極めて困難です 。
これらの要因が複合的に作用し、建築業界は縮小(シュリンク)傾向にあると言えるでしょう。
2. 業界縮小の中で、工務店が生き残るための鍵は「川上のお客様」
逆風が吹くなかでも、生き残る術は必ずあります 。その鍵となるのが、「川上のお客様と出会うこと」です。
「川上のお客様」とは、「おうち探しを始めたばかりの方」を指します 。
ほとんどの「川上のお客様」が最初に触れるのは、どこに住むか、すなわち「不動産」です。もしこの段階で工務店が接点を持てれば、単なる建築の受注を待つだけでなく、お客様に幅広い選択肢を提案できます。この選択肢を提案できる仕組み、つまり「ポートフォリオの作成」が、工務店の生き残りのために不可欠です 。
必須となる「不動産窓口」
住宅まわりの幅広いニーズをキャッチし、川上のお客様と出会うためには不動産窓口の設置が必須となります。不動産仲介を事業に加えるメリットは以下の通りです。
- 川上との接点獲得: 「土地を探したい」「今の家を売りたい」という初期段階のお客様と出会えます 。
- キャッシュポイントの拡大: 仲介手数料は、100%粗利かつキャッシュフローが早いという特徴があります 。これは、建築受注(コア事業)以外の重要なキャッシュポイントになります。
- 多様なニーズへの対応: 注文住宅だけでなく、空家、リノベーション、保険、ファイナンスといった幅広いニーズに対応できます 。
3. 今、工務店が着目すべき3つの需要拡大事業
お客様のニーズが多様化する中で、工務店が特に参画する余地のある事業領域を3つご紹介します。
代表例①:相続・贈与
高齢化が進む日本では、相続や贈与を起因とした住宅需要が増加しています 。特に「2025年問題」(団塊の世代が75歳以上になること)が叫ばれており、相続の本格化が予想されます 。
- 具体的なニーズ例: 「相続を機に実家を建て替えたい」「贈与目的でリノベーションしたい」といったケースです 。
- 工務店の役割: 不動産窓口で相続不動産を扱い、その後の建て替えやリノベーションの提案につなげることができます。

出典:令和6年 総務省 報道資料「統計からみた我が国の高齢者」
代表例②:民泊・インバウンド
コロナ禍以降、インバウンド需要が拡大しており、それに伴い「民泊転用住宅」のニーズが増えています 。
- 市場の可能性: 民泊関連の事業者が増えており、今後も需要拡大が続く可能性が高いため、工務店が**「民泊向けのリノベーション・建設」**として入り込む余地は十分にあります 。


出典:国土交通省
代表例③:地方活性化・地方移住
少子高齢化と並行し、都市部への人口集中と地方の過疎化が深刻な課題となっています 。この課題を解決するため、地方活性化や移住者増加を目指す自治体が増えており、関連市場も活性化しています。
- 具体的なニーズ例: 移住希望者が増えれば、「地方における住宅ニーズ」も増加します。注文住宅だけでなく、空き家の大規模リノベーションや地域交流拠点の整備など、工務店が参画できる余地が多くあります。
自治体向けソリューション市場規模推移・予測

出典:矢野経済研究所
4. まず、何から始めるべきか?
お客様によって「相続・贈与」「民泊物件」「地方移住」など、住宅ニーズは多岐にわたります。これらのニーズを拾うためには、工務店として“注文住宅以外”の選択肢を用意することが不可欠です。
そこで提唱したいのが、
「不動産窓口」を皮切りとした事業の横展開です。
自社に不動産窓口を設置することで川上のお客様と接点をもてるようになり、リフォーム、リノベーション、土地仲介、住宅ローンの支援など、事業を横展開できます。これにより、川上のお客様のニーズに応え、結果的にキャッシュポイントの拡大(=利益拡大)につながるのです 。
建築業界が縮小する時代だからこそ、事業の多角化は待ったなしの状況です。
「不動産仲介に参入したいけれど、具体的なノウハウや立ち上げのステップがわからない…」
「自社でどういったポートフォリオを組むべきか知りたい…」
といった疑問をお持ちの経営者様のために、建築会社・工務店様が不動産仲介業へ参入し、利益を拡大するための具体的なロードマップをまとめた資料もご用意しています。
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