なぜ今、立地が住宅購入の最重要課題なのか?その背景とデータ

昨今、住宅購入において「立地」を重視する購買者が増加しています。

この変化は、建築会社・工務店にとって、住宅購入者に対するアプローチや戦略など、事業のあらゆる面において大きな影響を与えるでしょう。

では、この現象の背景にはどのような要因が存在するのでしょうか。

本記事では、その理由や関連するデータを探ります。


立地重視の住宅購入者が増える要因とは


生活スタイルの変化


最適な住宅立地の選定には、個人のライフスタイルが影響します。

特に、コロナ禍の影響が顕著で、働き方や生活空間に対する意識が大きく転換しました。今までは、職場へのアクセスが重視されていましたが、在宅勤務の普及により、住居の立地は、仕事へのアクセスよりも、生活の質や快適性を重視する傾向にあります。

これらを機に、広々とした空間や自然環境を求める人が増えました。

また、家族との時間を大切にする意識が高まり、子育て環境や教育環境の充実も住宅選びの重要な要素となっています。


利便性を重視する傾向


現代社会では、時間効率が重視され、日常生活の利便性が求められています。

駅からのアクセスや商業施設の充実度、医療機関や教育機関の近さなど、日常生活を円滑に過ごすための利便性は、住宅選びにおいて重要な要素となっています。

特に、子育て世代では、学校や公園、病院へのアクセスが重視され、高齢者世帯では、医療機関や介護施設へのアクセスが重視されます。

また、近年では高齢化社会の進展に伴い、高齢者向けの住宅や介護施設の需要が高まっています。そのため、医療機関や介護施設へのアクセスが良好な立地は、ますます重要性を増しています。

経済状況の変化1.平均年収の鈍化


過去10年間、日本の平均年収は横ばいとなっており、物価上昇率を下回っているため、実質所得は減少傾向にあります。


(出典:国税庁 令和5年分 民間給与実態統計調査

このことから、人生で一番の大きな買い物である住宅購入は、ますますハードルが高まっていると言えます。

経済状況の変化2.住宅価格の高騰


住宅金融支援機構2023年度フラット35融資利用者調査によると、2023年度の注文住宅にかかる建築費の全国平均価格は3861.6万円となっています。

また、過去5年の建築費の推移を見ると、全国平均で409万円上昇しており、全国的な傾向として注文住宅の建築費は年々アップしていることが見て取れます。


(出典:住宅金融支援機構2023年度フラット35融資利用者調査飯田グループホールディングス『すまいーだ』

経済状況の変化3.住宅ローンの平均借入額


次に、住宅ローンの平均借入額を見てみます。

国土交通省の同調査報告書によると、新築住宅購入時の住宅ローンの平均借入額は3,000万円~4,000万円とされています。

具体的には、注文住宅で平均3,772万円、分譲戸建住宅で平均3,054万円です。

住宅の種類ごとの平均借入額(一次取得・二次取得の合計)は以下です。


(出典:令和4年度 住宅市場動向調査報告書|国土交通省三井住友銀行

注文住宅を新築する場合は、建て替えや中古住宅を購入する場合と比較して高額な費用がかかり、もはや注文住宅は、属性の高い人向けになってきているといえます。

これらの背景から、限られた予算の中で、建物と立地の両方を理想的に求めるのは難しいのが現状です。

建物か、それとも立地か。

このジレンマの中で、多くの人が潜在的に「立地」を優先する選択をするようになっています。

立地にこだわる人は不動産屋へ足を運ぶ


前述のとおり、住宅購入を検討する際、多くの人がまず注目するのは「立地」です。

しかし、実際の行動に移す際には、モデルルーム見学やインターネットでの情報収集が主流となっています。

大和ハウス工業の調査によると、戸建住宅を建てる際の最初の行動として、「モデルルームや住宅展示場を見学する」が1位、「住宅メーカーのウェブサイトや不動産ポータルサイトを見る」が2位、3位という結果が出ています。

これは、大手ハウスメーカーが長年かけて築き上げてきたブランド力と、莫大な広告費による集客力の賜物と言えるでしょう。


(出典:大和ハウス みんなの声が知りたい!家づくりの意識調査

しかし、一方で、3〜5位のように「住みたいエリアを散策する」「不動産屋などの店舗に行く」といった、立地を重視した行動を取る人も少なくありません。

この層は、まだ具体的なハウスメーカーを絞り込んでおらず、様々な選択肢を検討している段階です。

中小工務店が、大手ハウスメーカーとの競合に打ち勝ち、この層にアプローチするには、不動産窓口を持つことが非常に有効です。

中小工務店が勝ち抜くための戦略:立地重視層への効果的なアプローチ


地域の特性に合わせた提案が可能


地域に根差した中小工務店は、大手ハウスメーカーにはない、地域ならではの情報を提供できます。

例えば、周辺環境、交通アクセス、子育て環境など、購入者が気になる情報を詳しく説明することで、信頼関係を築くことができます。

顧客との接点が増える


不動産窓口を設置することで、顧客との接触機会が増え、より深く要望を聞き出すことができます。

これにより、顧客のニーズに合った最適なプランを提案することが可能になります。

競合との差別化


大手ハウスメーカーが重視するブランド力や大規模な展示場とは異なり、中小工務店は、地域密着型のサービスや、手作りの温もりを感じられる住宅を提供することで、差別化を図ることができます。

このように、工務店が不動産窓口を設けることは、新たな収益源となるだけでなく、顧客との長期的な関係構築にも役立ちます。

顧客ニーズを把握して、最適な住まいを提供することで、顧客満足度を高めることができます。

顧客ニーズを的確に把握し、それに対応できる情報を自社で扱えるようになることで、工務店は新たな成長ステージへと進むことが可能になるでしょう。

『建築×不動産仲介業』の成功事例から学ぶ


建築会社が不動産窓口を設けたことにより、事業成長へとつながった成功事例が多数あります。

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