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中古マンションの売却時に発覚した、過去の「無許可の穴開け工事」。
18年も前のことであれば「時効だから問題ないのでは?」と考えがちですが、心情や現場判断だけで片付けるのは極めて危険です。
安易な対応は、引き渡し後に買主や管理組合との深刻な法的紛争を招く恐れがあります。
本記事では、実際の相談事例をベースに、不動産法務に強い弁護士が、時効の落とし穴や仲介担当者が取るべき調査実務の境界線を詳しく解説します。
相談事例
Q:分譲マンションの壁に無許可で穴を開けた可能性がある場合、工事から約18年が経過していれば、時効により原状回復を免れますか?
A:時効が成立している可能性はありますが、共用部分や建物の安全性に関わる工事では、18年の経過だけを理由に問題なしとして売却するのは危険です。
相談背景
仲介会社が専任媒介で預かった分譲マンションについて、売主から「約18年前のリノベーション時に、追い焚き配管を通すため壁に穴を開けた」と申告がありました。
売主は、当時のリノベーション会社が管理組合や管理会社の許可を得たか覚えていません。
これまで管理会社から指摘を受けたことはありませんが、無許可工事だった場合、売却後に買主や管理組合から原状回復を求められないかが問題となりました。
仲介会社として、管理会社へ確認すべきか、事情を買主に説明してそのまま売却できるか、判断に迷っている事例です。
弁護士の回答
⑴ 18年経過していても、当然に問題がなくなるわけではありません
管理規約に違反する工事について、どのような法的責任が生じるかは、工事の内容や建物への影響によって異なります。
建物の構造や安全性に影響する工事であれば、単なる管理規約違反にとどまらず、不法行為に準じた問題として扱われる可能性があります。
この場合、一般的には、損害や加害者を知った時から3年、行為時から20年という期間が問題になります。
一方、建物の安全性への影響が小さく、外観や仕様の統一などを目的とする管理規約に違反しただけであれば、契約上の義務違反として、より短い時効期間が問題になる余地があります。
⑵ 壁への穴開けは、慎重に考える必要があります
今回の工事は、追い焚き配管を増設するため、マンションの壁に穴を開けたというものです。穴を開けた部分が専有部分内の仕切り壁であれば、建物全体への影響は限定的な場合があります。
しかし、外壁、戸境壁、床、梁などの共用部分や構造部分に施工している場合、耐震性、防水性、防火性などに影響する可能性があります。
そのため、「小さな穴だから問題ない」と判断するのではなく、まずは穴を開けた場所、施工方法、使用した配管、現在の状態を確認する必要があります。
資料が残っていなければ、専門業者や建築士による調査も検討すべきです。
⑶ 時効だけで原状回復義務を否定するのは困難です
工事から約18年が経過し、その間、管理組合や管理会社から指摘がなかったことは、売主にとって有利な事情の一つです。
しかし、それだけで工事が承認されたことになったり、将来の原状回復請求が当然に認められなくなったりするわけではありません。
特に、現在も共用部分が変更された状態が続いている場合、過去の工事による損害賠償請求だけでなく、管理規約に基づく是正や原状回復の問題が別途生じる可能性があります。
したがって、媒介実務では「18年間指摘がないので時効により問題ない」と説明することは避けるべきです。
⑷ 仲介会社は管理会社への確認を優先すべきです
実務上は、まず売主の了承を得た上で、管理会社または管理組合に過去の工事申請書、承認書、議事録などが残っていないか確認する方法が適切です。
リノベーション会社の名称や当時の見積書、図面、請求書なども手掛かりになります。
承認済みであることが確認できれば、その資料を買主へ提示できます。
無許可工事であった場合には、現状を確認して追認を得る、必要な補修や原状回復を行うなど、管理組合と協議することになります。
確認しないまま売却する場合には、買主に工事の経緯、許可の有無が不明であること、将来是正を求められる可能性を具体的に説明し、契約書や重要事項説明書にも明記すべきです。
ただし、説明したからといって管理組合との関係まで解決するわけではありません。
⑸ まとめ
追い焚き配管工事から約18年が経過していても、時効だけを根拠に原状回復義務や将来のリスクを否定することはできません。
特に壁への穴開けが共用部分や構造部分に及ぶ可能性がある場合、管理会社への確認を優先し、必要に応じて調査・補修を行った上で売却するのが安全です。
弁護士の実務コメント
中古マンションの売却では、過去のリフォーム工事の申請書類が残っていないケースも珍しくありません。
重要なのは、直ちに違法工事と決めつけることではなく、施工箇所と建物への影響を段階的に確認することです。
仲介会社としては、時効の判断を先行させず、調査経緯と買主への説明内容を記録に残すことが、将来の紛争予防につながります。
山村 暢彦氏弁護士法人 山村法律事務所
代表弁護士
実家の不動産・相続トラブルをきっかけに弁護士を志し、現在も不動産法務に注力する。日々業務に励む中で「法律トラブルは、悪くなっても気づかない」という想いが強くなり、昨今では、FMラジオ出演、セミナー講師等にも力を入れ、不動産・相続トラブルを減らすため、情報発信も積極的に行っている。
数年前より「不動産に強い」との評判から、「不動産相続」業務が急増している。税理士・司法書士等の他士業や不動産会社から、複雑な相続業務の依頼が多い。遺産分割調停・審判に加え、遺言書無効確認訴訟、遺産確認の訴え、財産使い込みの不当利得返還請求訴訟など、相続関連の特殊訴訟の対応件数も豊富。
相続開始直後や、事前の相続対策の相談も増えており、「できる限り揉めずに、早期に解決する」ことを信条とする。また、相続税に強い税理士、民事信託に強い司法書士、裁判所鑑定をこなす不動産鑑定士等の専門家とも連携し、弁護士の枠内だけにとどまらない解決策、予防策を提案できる。
クライアントからは「相談しやすい」「いい意味で、弁護士らしくない」とのコメントが多い。不動産・相続関連のトラブルについて、解決策を自分ごとのように提案できることが何よりの喜び。
現在は、弁護士法人化し、所属弁護士数が3名となり、事務所総数7名体制。不動産・建設・相続・事業承継と分野ごとに専門担当弁護士を育成し、より不動産・相続関連分野の特化型事務所へ。
2020年4月の独立開業後、1年で法人化、2年で弁護士数3名へと、その成長速度から、関連士業へと向けた士業事務所経営セミナーなどの対応経験もあり。
弁護士法人 山村法律事務所
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神奈川県弁護士会 所属
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