
「川下の奪い合い」から脱出、「川上で出会う」ことでコア事業強化・多角化が可能に
人口減少、金利や資材価格の高騰、人件費の上昇…住宅市場が縮小していく中、多くの工務店が厳しい経営環境に直面しています。
「集客がうまくいかない」「相見積もりばかりで価格競争に巻き込まれる」「資材高騰で利益が出ない」といった課題は、もはや他人事ではありません。
こうした状況を打破するために、新たな事業を模索している方も多いのではないでしょうか。
この記事では、工務店が「不動産の窓口」になることで、なぜこれらの課題を解決できるのか、その理由を掘り下げていきます。
「川下」での戦いから抜け出すには?
住宅購入の流れで考えると、多くの工務店は、すでに家を建てる意思を固めたお客様を相手にする「川下」に位置しています。
しかし、この「川下」には多くのライバルがひしめき合っており、似たようなデザインや性能の家を建てる工務店同士で、数少ないお客様を奪い合っているのが現状です。
この「レッドオーシャン」で戦い続けることは、非常に困難だと言わざるを得ません。
では、どうすればこの状況から抜け出せるのでしょうか?
それは、お客様が家づくりを考え始めたばかりの「川上」で出会うことです。
家づくりの初期段階で接点を持つことができれば、お客様の漠然とした悩みや希望に寄り添い、自社の強みや想いをじっくりと伝えることができます。
この関係性を築くことで、価格競争に巻き込まれることなく、お客様にとって唯一無二のパートナーとなり、自社の建築へと導くことが可能になります。
「川上」で出会うための最強の手段とは?
では、「川上」でお客様と出会うには具体的にどうすればいいのでしょうか?
その答えの一つが、「工務店が不動産仲介の窓口になること」です。
ある調査によると、住宅購入を考え始めた人が最初に訪れる窓口は「不動産屋」が最も多く、次に「住宅展示場」が続きます。「地元の工務店」を最初に選ぶ人はわずか7%にすぎません。
また、最初に不動産屋を訪れた人の80%が「どこで建てるか決まっていない」と回答しています。これはつまり、多くの人が「建物」よりも「立地」を優先して家探しをスタートさせているということです。
この事実は、工務店にとって大きなチャンスを意味します。
不動産の窓口になることで、家づくりを考え始めたばかりの潜在顧客と圧倒的に早く出会うことができるのです。
「建築×不動産」の組み合わせがもたらす3つのメリット
工務店が不動産事業に参入することは、単なる事業の多角化ではありません。それは、既存事業の課題を解決し、経営を安定させるための強力な戦略です。
「建築×不動産」は、それぞれのメリットを最大化し、デメリットを無効化できる「最強の組み合わせ」と言えます。
具体的には、以下の3つの大きなメリットがあります。


1.競合の少ない「川上」のお客様と出会える
不動産の窓口になることで、まだ特定の工務店を定めていないお客様にアプローチできます。価格競争に巻き込まれることなく、コンサルティングを通じてお客様との信頼関係を築き、成約率を大幅に向上させることが可能です。
2.抜群の費用対効果で集客数が激増する
不動産情報という強力な集客ツールを活用することで、自社ホームページへのアクセスを増やし、反響数を飛躍的に伸ばすことができます。
建築事業だけでは難しかった集客の課題を、低コストで解決できるようになります。
3.「負けない営業」ができる
不動産仲介は、建築の受注に結びつかなくても、仲介手数料という形で利益を得ることができます。
「まずは川上で接点を作り、コア事業である建築で売上を上げる」という割り切った考え方ができるため、プレッシャーの少ない営業が可能になります。
お客様のニーズに合わせて、土地探しや中古住宅の売買をサポートし、信頼を獲得すれば、結果的に建築の受注にもつながっていくでしょう。
導入工務店の成功事例
実際に「建築×不動産」の仕組みを取り入れた工務店は、どのような変化を体験しているのでしょうか?
滋賀県で新築事業を手がける株式会社重信工務店様の事例をご紹介します。
詳細はこちら
「新築の受注が落ち込んだ時期があり、何か新しい取り組みをしたいと考えました。不動産仲介の経験はありませんでしたが、物件王・藤井社長の思いに共感したこと、自社の名前でできること(FC のように看板共有がない)、建築受注のための不動産仲介という私の目的と合っていたことが決め手になりました。
最初の 2 年間は思うようにいきませんでしたが、3 年目にようやく『不動産もやっている工務店』ということが地域に認知され始め、集客ができるようになりました。
以前は「建物という商品で集客すればいい」と考えていましたが、実際には家を探し始めたお客様は建物よりも立地を重視し、まず不動産屋に行くことを身をもって知り、「川上」に立つことの重要性を強く感じています。
現在は土地探しのお客様の 3 分の 1 程度が当社の建築を選んでいただいています。集客・受注につながっており不動産仲介を始めて本当によかったと思っています。」
こちらからインタビュー動画をご覧いただけます
安定した経営と事業拡大の可能性
「工務店が不動産の窓口」になることで、お客様は不動産業界の慣習や都合に惑わされることなく、土地と建物に予算と時間を正しく使えるようになり、満足度の高い家づくりが可能になります。
また、工務店側も、新築事業だけでなく、中古住宅のリノベーションや非住宅、民泊など、建築の知識や経験を活かした事業の多角化へとつなげることができます。
不安定な市場環境の中でも、安定した経営基盤を築き、事業を拡大していくための大きな一歩となるはずです。
「建築×不動産」という新たなビジネスモデルは、工務店とお客様、双方を幸せにする可能性を秘めていると言えるでしょう。
あなたの会社では、すでに「川上」での集客に取り組んでいますか?
もしそうでなければ、この機会に「不動産の窓口」になることを検討してみてはいかがでしょうか。